久しぶりのブログです。少々、プライベートでバタついておりました。
ブログの更新は滞っておりましたが、ホームページとしては、少しずつサポート用のツールなどの情報をアップしていました。身内以外のアクセスが増えてくるようにもなってきたようです。うれしい限りです。
さて、年度も変わり時間があれば、現場に顔を出すようにしております。今日は、昨年度に応用行動分析学に基づく保育アプローチについての連続研修を受講していた園の、その後の様子をヒアリングに行ってまいりました。
昨年度の研究をさらに発展させるためのデータ収集も兼ねています。研究の視点がそのまま残されているフィールドなので、こちらにとっても得るものが多かったので、今日は備忘録もかねてご報告。
今日訪問した保育施設では、昨年度の研修を受けたコーディネーターを中心に新年度の保育実践を検討しているところでした。今日、私が訪問するということで、改めて指導をもらいたいとA4用紙4枚に隙間なく、「今、困っていること」が書き込まれていました。
私としては、昨年度の研修で実践に取り組んでもらい、その後は園全体での実践に拡大しているイメージを持っていたのですが、実際は「何から手を付けていったらよいかわからない。ぜひ、それを教えてほしい」ということでした。子どもたちの行動は悪化の一途をたどっているとのことでした・・・。
この園は、昨年度の研修の中で行った実践では、子どもの行動上の問題に有効な手立てをとることが出来るようになっておりました。しかも、その手ごたえについてはコーディネーターのみならず、研修に参加していなかった担任も実感しておりました(データをとってくれていたので、効果は認めていました)。
でも年度が替わると途端に、その環境を維持することができなくなり、どこから手を付けてよいかわからないという状態になっているということでした。一つの大きな理由は、職員が担任以外大きく変わり、しかも5名の担任以外の保育者が一日に子ども達に関わります。このうち、加配保育士の4名は勤務時間もバラバラのため、具体的な対応について情報共有することが困難な状態でした。そのため、一貫性のない対応が不適切な行動を間欠的に強化し、状態は日に日に悪化していったということです。
「個別の支援計画」や「個別の指導計画」の重要性は、こういうところにあることを、具体的な事例を交えて話をしたつもりですが、こうした計画書の類が、一貫性のある支援行動を誘発する手掛かりにはなりにくいのも現実です。
さらに、保育年齢が上がるとともに、集団への完全参加に焦点を当てすぎるようになることも悪化の理由の一つでした。
これは、よくある話なのですが、「個別の支援の提供を続けていると、小学校へ行ったときに困ってしまうのではないか」「これまでよりも支援を減らしても動けるようにしなければ、本当の意味で集団参加していることにはならないのではないか」という保育者の焦りも影響していました。
私は、これを「支援のボトルネック現象」と勝手に名づけています。就学前と、受験を伴う高校への進学が控えた中学2年生の後半から3年生の時期、あるいは特別支援学校の高等部から一般就労を目指す際によくみられる現象です。
次のステージの環境が大きく変わることが予想される(今までの支援の提供の保障がないと言う漠然とした不安がある)と、今までの支援の提供を何の戦略もなく減らしたり、無くしたりしてしまいます。そして、支援が突然得られなくなった子どもの状態は、一気に悪化します。
研修などで応用行動分析学に基づくアプローチをできるようには出来ても、こうした現象に追い込んでしまう随伴性については、まだまだ十分に検討できていません。「支援の必要性」「支援の一貫性」についての認識が、ライフステージによって簡単に変更されない何らかの戦略が必要だと考えています。この部分は、私の研修内容の問題でもあることは、現時点では否定できませんね。
遠からず、保育士の人材養成の問題がこの先いろいろと問題になってくると思われます。おそらく、こうした問題はさらに複雑化していくでしょうし、今以上に現場は混乱することは目に見えています。
環境の変化に耐えられる保育所、幼稚園を作るにはどうしたらよいのか・・・。
「支援のボトルネック現象」を防ぐには、どうしたらよいのか・・・。
今年は、この点について、さらにデータを集め検討していく必要がありそうです。現場の実態を目の当たりにすることで、こちら側の戦略が足りていなかったことを痛感しています。さっそく、明日以降の研修に反映させていこうと思います。
ただ、落ち込む話ばかりでもありませんでした。昨年度の成果は他の部分では維持していました。
発達支援コーディネーターの保育士は、問題の所在がどこにあるのかを、私の見立てを話すだけですぐに、理解していました。そして改めて戦略の立て直しをする段取りを指示していました。しかも「強化」や「消去」というテクニカルタームを、他の保育士に対して使ってましたし・・・(実は、これが一番うれしいところなのです、いろいろと)。
さらに、連続研修をうけていなかった担任は、研修受講者以外の保育者のために作成し、試用してもらっていたワークブック(研修内容のポイントに特化したもの)を読みながら、実践し、年度が変わるまでは行動改善にまでもっていけたということです。去年の仕掛けは、ちゃんと機能していました。これはとてもうれしい結果です。
ことしは、このワークブックを本格的に連続研修に導入しています。成果の有無についてはさらに多くのデータを集めることになりますが、有効性が確認されれば、本格的に実践に取り入れてもらう予定です。